2010/12/30

アラゲホンジ!アラゲホンジ!アラゲホンジ!

太鼓の世界から飛び出せない自分がとても小さく見えました。

「こういうことやりたかったねん!」というバンドにまた一つ出会えました。
あまりにやりたいことと近すぎて、自分でやるより見て踊ってる方が楽しい!と思ったくらいです(笑)。

アラゲホンジというのは、「東北民踊ロックバンド」を標榜する和洋折衷(というのが適当なのかは?ですが)バンドで、フジロック出演経験もあります。
この日のバンド編成は、Vo&G,G,B,Dr,和太鼓・鳴り物×2~3、篠笛、踊り、といったところ。リズミカルなギターをバックに…という野暮な説明より実物見た方が早いですね。




津軽、秋田などの東北民謡以外にも、阿波踊りや石川の唄、「りんご追分」などもあり、「ラッセーラ、ラッセーラ」「あやっとさー」と踊りっぱなしでした。

踊ってみてわかりましたが、あえて単純化すると、七頭舞や荒馬はタテノリ系、阿波踊りはヨコノリ系のような気がします。ロックのように拍を強調する音楽とのマッチングも違和感なく、それに加えて邦楽には基本的にない「和音」がバックアップして楽しい雰囲気も倍増。踊りの基本的な部分には洋の東西はあまり関係ないんだなー、と感じました。

1月4日に吉祥寺曼荼羅2で年明けライブがあるそうなので、興味ある人、踊りたい人はぜひ!

(2010.12.28 青山月見ル君想フ)

2010/12/21

Pop を宿したRock~チャットモンチー~

OKAMOTO'Sが19歳なのにいちばん驚いた(笑)

それはともかく、カレンダー見ると1年半ぶりのチャットモンチーでした。
今年は徳島(チャットモンチーの出身地)に阿波踊りを見に行ったのと、彼女たちも徳島で作ったアルバム『Awa Come』を秋に発売したものあって、これも楽しみにしていました。

『Awa Come』から4~5曲、この日発表された来年3月23日発売のNew albumから初披露の新曲2曲、逆にメジャーデビュー前のアルバムから「夕日哀愁風車」をやり、民生と同様、新旧入り混じったセットリストでした。

僕が見ている他のバンドに比べると(これがまたみんな上手いので)、演奏力としてはまだこれからの部分が大きいですが、やり慣れている曲ではかなりまとまった演奏、バンドサウンドになってきた感があります。「青春の一番札所」「親知らず」「Last Love Letter」ときて、4曲目の「Make up! Make up!」あたりから演奏も落ち着いてきてグルーヴやドライブ感に手応えも感じられました。逆に新曲はやはりちょっとおっかなびっくり感が・・・(笑)
しかし全体としては、アレンジを見ていても演奏自体をいままで以上に楽しめているようで、来年のツアーが楽しみです。新曲もよかったので、アルバムも楽しみ。

本編クライマックスでアクセル踏むあたりでは、Twitterでのリクエスト1位になった「夕日哀愁風車」を演奏。「(歌詞が若い時代のもので、26~7歳で演奏する曲じゃない、と)ずっと避けてきた曲」だったそうですが、中学生に戻れなきゃロックなんてやってる意味ないです(笑)。吉井和哉は「中学生を踊らせてこそロック」と言ったし、ヒロトは「14歳にしてやるぜ」と歌っています。デビュー前の彼女たちはもちろん知りませんが、この日この曲の演奏はおそらくその当時以上にパンキッシュで、「それでこそロックだよ!」としたり顔になって聴いてしまいました。
ロック聴きながら歳をとると大人と子ども両方の気持ちが分かるので(そう思ってるだけかも知れませんが)、まんざら歳をとるのも悪くない、年齢はやはり「重ねる」ものだなあ、と思います。

で、オーラス、アンコールのラスト「やさしさ」では、〝明日ダメでも 明後日ダメダメでも 私を許して それがやさしさ〟と歌詞1フレーズをひったすら繰り返し音と感情を増幅させていくチャットモンチー的ロック・ダイナミズムが余すところなく発揮され、しかも演奏もよくて、ミドルテンポのロックの醍醐味がたっぷり出ていました。ロックっぷりは過去最高で、確実に力をつけていますね。

(2010.12.18 中野サンプラザ)

2010/12/20

異色彩のブルース~Ego-Wrappin' with 八代亜紀

「舟唄」が頭から離れないー。
期待していましたが、他の人たちも期待していたらしく(当たり前か)、期待以上に盛り上がりました。

年末恒例の、東京キネマ倶楽部でのライブも今年で10周年、チケット倍率は毎年3~40倍らしいですが、幸運なことにここ数年は毎年行けています。デビュー当初はほんとに取れなかったんですが。

↓Midnight Dejavu 10年の軌跡


10周年と言うことで、本数も前後半合わせて8本、他に大阪とソウルの計10本。前半はゲストを呼んでのステージと言うことで、チケット当選後、ゲストの発表を心待ちにしていました。発表されたとき、意外性はあったものの違和感はまったくなく、あの元キャバレー(キネマ倶楽部は、映画館を改装して作ったキャバレーを改装して作ったライブハウス)で八代亜紀の生歌が聴けるとあり、メールを見て思わず「よし!」とつぶやいてしまいました。

当日、いつも終演が遅いので、予め軽く飲んだあと会場へ。
いつものセットを前にいつもの位置で開演を待っていると、客電が落ち森ラッピンとGoship of Jaxxのメンバーが登場。アニバーサリーイヤーのためか、珍しく森ラッピンのMCから始まりました。「10年やって来られて感謝している」みたいな話のあと、1曲目は「Work Song」、2曲目も「買い物ブギ」と、どちらも大好きなカバーが端から続きます。この辺も自分たちのルーツの提示を意識したのでしょう。

↓キャノンボール・アダレイ


↓笠置シヅ子は「ラッパと娘」がいっちゃん!


そしていつもとは少しまなざしの違うよっちゃん。
目が「どや?どや?」と強く訴えています。どや?と言っても「ドヤ顔」のそれではなく、「私らこんな感じやけどみんなはどう?」という顔。後からわかりますが、そうとう緊張していたようです。それはプラスに作用していましたが。
さらに髪型も盛り盛り。身長だけでも八代亜紀に対抗しようとしたようです(笑)。

中盤、「行くでぇ!」の号令のもと、「雨の慕情」の前奏がスタート。「女神」が姿を見せる前からフロアは最高潮にヒートアップし、よっちゃんがボーカルを取るというネタをかました後、演奏をリスタートさせて本人が登場、最高潮かと思われた会場はさらにヒートアップし、果ては「雨 雨 降れ 降れ もっと降れ」の大合唱に。やはり国民的スター、これぞ国民的名曲、というのを目のあたりにしました。

会場がキャバレーだったクラブシンガー時代の話を前振りに、スタンダードジャズのナンバー「You'd be so nice to come home」をよっちゃんとのツインボーカルで披露した後、まあ「お待ちかね」との表現しかできない「舟唄」へ。この流れの前振りのトークが心を打ちました。

話の流れの中では何気なくスルーしてしまうような話題だったのですが、こんな話でした。
「昔、演歌は〝流行歌〟と呼ばれ、誰もが知っていた。そして毎年、レコード大賞を取るようないい曲が4曲も5曲もあった。その中で『雨の慕情』が一番になった」という話です。
いまの音楽恐慌でもミリオンは出ますし、多くの若い人が知っている歌はもちろん生まれます。しかし「国民みんなが知っている曲、みんなが歌える歌が生まれなくなった」と多くの人が指摘するのも事実なようで、昔はみんなの心をつかむ曲が多くあったようです。
もちろんこれは、音楽の作り方というより、我々の生活スタイルそのものの変化によるところが大きいのだとは思いますが、和太鼓という老若男女に愛される文化に携わる人間としては、世代を超えて親しまれる歌がもっともっと生まれて欲しい、と思います。

「舟唄」で女王が退場したあと、「ブルース対決」ということで「色彩のブルース」へ。大好きな曲ですが、なにぶん「舟唄」の余韻が強すぎて、この曲といえどそれを消すことはできませんでした。次の「サイコアナルシス」でやっとEgoモードを取り戻せた感じです。



アンコールのラストでNat King Coleの「LOVE」をふんわりと聴いて、余韻を感じながら家路へ。
先日のBlues-the.Butcherではほんもののブルースに浸りましたが、今度は日本で言う「ブルース」にその後数日浸り続けることができました。

何やら今年はライブの当たり年のようで、過去最高クラスのアクトが続きました。
これでタイガースが優勝してれば言うことない一年でしたが(笑)
(2010.12.10 東京キネマ倶楽部)

2010/12/18

King of Rock Go Ahead !! ~奥田民生~

お気に入りのアーティストのライブに行くといつも、「こいつが一番!」と思いますが、やはり民生は民生、「King of Rock」でした。

いつものライブにも増して、戦いの最前線を飄々と進む彼の姿がかっこよく見えたのはなぜでしょうか。よくわかりませんが、今回不思議な感覚だったのが、昔の曲が昔の曲に聞こえなかった、ということです。

楽曲の良し悪しとか特徴、ということとはちょっと違い、また、「古い曲に新しい命が吹き込まれた」というのとも少し違います。
1曲目は僕の中では5本指に入る「人間2」。その後も「彼が泣く」「恋のかけら」と旧作からの連続で、4曲目にやっと今作『OTRL』から「音のない音」をやりました。セットリスト全編を通しても、新旧織り交ぜた構成だったのですが、何というか、今までのアルバム全部がこの前発売された、みたいな感じ。上手く言えない(^_^;)。ソロデビューした10数年前から今までの時間が圧縮された感じです。時の流れを飛び越えたような・・。

キャリアが四半世紀を超えたこと、ユニコーンを再結成し、「バンドマン」という立ち位置に再び立ったこと、現バンドメンバー(””)になって数年たち、バンド力も決定的な水準になっていること、〝公開宅録〟という誰も考えつかないような裸一貫の勝負でアルバムを作り、おそらく無駄な思考を(今まで以上に)そぎ落としたこと・・・などなど、たぶんいろんな要素・要因があったのでしょうが、それがタイミングを一にして〝降りてきた〟状態にあるのでは、という気がします。ちょっと神がかっている感じです。

バンド力で言えば、前のバックバンド(G:長田進、B:根岸孝旨、Dr:古田たかし、Key:斉藤有太)の演奏として最高の到達だと僕が思っている「E」から、「ハネムーン」へ中盤の演奏を聴いたとき、「このバンドもついにここまで来たか」と感じました。「E」のエレキチューンにもしびれましたが、とくに「ハネムーン」は、歌詞の深遠な切なさをそのまま表現するかのような演奏で、圧倒されました。

「3曲目がピーク、あとは終わりに向かってテンションは下降線」という、いつもの天の邪鬼トークと裏腹に、いつも以上のテンションで吠えまくる民生。アンコールで出てきたときにツェッペリンのリフを奏でて(危うく?「Whole Lotta Love」が始まりそうになりましたが)、演奏したくてうずうずしている有太&雅史、「50歳児」(実は来年還暦)と呼ばれ子どものようにはしゃぐ礼さん・・・過去の民生のライブのなかで、1,2を争う出色の出来でした。齢五十を待たずしてミュージシャン仲間から「レジェンド」と呼ばれるのも頷けます。

個人的には、僕が三十歳になるときに発売された「花になる」(僕の曲だと勝手に思っています)が久しぶりに聴けたのもよかったです。その当時はあまり思いませんでしたが、相対的な年齢差が縮まって来たせいか、「花~」を聴いて、彼の姿を見て、「民生のような男になりたい」と初めて思いました。どうすりゃいいのかわかりませんが(^_^;)。

民生はおそらく、(暗い意味ではない)展望のない世界、つまり道も光もない世界、進むべき方向さえ指し示されていない世界の先頭を走っている気分なのだと思います。道しるべがないのは芸術だから当たり前かも知れませんが、彼の後を追いかけるミュージシャンはゴマンといることが、「方向はないのに先頭がある」この世界の面白さと厳しさを象徴しているのではないでしょうか?
(2010.12.14 神奈川県民ホール)

2010/12/10

ぜひ読んで欲しい記事

マサのブログです。
天然ガス採掘に関する記事。日本も無関係じゃないはずです。
http://taikonnection.blogspot.com/2010/12/blog-post_09.html

2010/12/08

30年のトップランナー~林英哲~

さすがに圧巻、さすがに林英哲のステージでした。

僕の好みとは少し異なりますが、和太鼓界ではいわゆる「一人打ちスタイル」を築き上げた草分けであり、現在も最先端を行く押しも押されもせぬ第一人者です。
タイコウチの端くれとしてはたまにチェックしとかないと、と思ったのと、通っている床屋の常連さん(ヴァイオリニスト)がゲストで出演される、ということで、久しぶりにソロコンサートに足を運びました。
行ってみて知ったのですが、久しぶりだったのもそのはずで、単独公演は11年ぶりだったそうです。

第1部はセット太鼓中心、第2部は大太鼓中心のプログラムで、第1部は率直にいって面白みに欠けていたうえに、S席なのに演者が見えない局面があり、「がっかりだー」と思っていましたが、一転第2部はこれが60の声を聞こうかという人とは信じられないくらい、圧巻でした。

大太鼓をこれほど楽器として打ちこなしている人、使いこなしている人はいないでしょう。
彼の太鼓(ビートや音)は直線的なので、僕らやそれより若い世代になると、セット太鼓ではもっと揺れや丸みが欲しくなり音楽的な好みは異なってしまうのかも知れませんが、大太鼓はもやは独壇場。見事に手玉にとられた感じでした。

ゲストのヴァイオリン&オルガンとのコラボは、ヴィターリという名前からしてイタリア人?の曲をやりました(僕はよく知りません)。前半は決まった曲に太鼓をあわせてる感じで、大太鼓の魅力がいまいち発揮されませんでしたが、後半、即興(ではないんでしょうが)的な部分にさしかかると、怒濤のような音で会場を包み込む、というか音の飽和状態にします。人の曲を使わずに、最初からインプロで行った方がよかった気がしますが、それにしても、あの齢にして他の追随を許さない大太鼓は見事というほかありません。

読経とのコラボもありましたが、これははじめから期待していたので、ばっちり好みの音楽が聴けてラッキーでした。

というような複雑な感想のステージでしたが、英哲さんの歳を考えるともうあんなものは見られないんでしょうかねー。見ておいてよかったです。
(2010.12.6 サントリーホール)

2010/12/07

夜祭り終わって冬が来た!

ここ数年、なんだかんだとほぼ毎年行っている秩父夜祭。
今年はメインイベントが金曜ということもあり、響からも10人弱が参加しました。僕と秩父の付き合いもそろそろ20年になろうかというところで、チチビアンの知り合いや友達も増えてきました。

僕は夜祭りではなく春に山田地区で行われる春祭りにもっぱらお世話になっているのですが、太鼓組はとりわけ「人の貸し借り」が多いらしく、山田の友達が夜祭りの山車に乗ってたり、夜祭りの町会の打ち手が山田の山車に乗ったりしているので、夜祭りでも知り合いに会うことが多いです。

報道発表では21万人超の人出だったようですが、「こいつは来てるだろうな-」と予想したチチビアン全員に会えたのは、何か吸い寄せられるものがあったのでしょうか?(笑)

秩父屋台囃子には、特に地打ちに独特の「訛り」がありますが、町会によって微妙に訛りが違うのがおもしろいところです。
さらに、笛も太鼓も即興というかなり珍しいお囃子(普通は笛のメロディは決まっている)ため、「手ぐせ」にも町会の違いがあらわれます。

僕が乗せてもらっている春祭りの山車には、夜祭りの町会である「本町」「下郷」「上町」から助っ人が来て、かなりブレンドされたお囃子になります。
「手」だけでなく、スタイルも町会によって違います。これは、山車の内部構造がそれぞれ違い、したがって太鼓の乗せ方もそれぞれ違うので、自ずと「振り」が変わってくるためです。
地元でお囃子をがっつりやってる人なら、一目見ただけでどこの町会かわかるようですね。

僕もほぼ人生の半分、長い付き合いになりました。秩父を離れて仕事をし、お祭りのときだけ戻ってきて会う友人もいます。もはや「第二の故郷」のような心持ちです。

この日20℃近くまで上がった気温は、明け方0℃近くまで下がりました。
「秩父路に冬を呼ぶ夜祭り」の面目躍如といったところです。
そして「山田の春祭り」まで、秩父地方は厳しい冬に入ります。

2010/12/02

ROCKで踊れ!〜Triceratops〜

どうやら〝踊れるロックの最高峰〟という称号を与えられたらしいTriceratops
実際のところその通りです。タテにもヨコにも揺らせるバンドとしては唯一無二の存在、タテノリの振幅×ヨコノリ振幅の値=ノリの「面積」は、国内最大だと思います。

等身大の詞世界とキャッチーでラブリーなメロディ、それに対置するかのような、ギターリフ主体のコアなロックサウンド。そして何よりも、それらを一つの音楽にまとめ上げる確かな演奏力と野太いクルーヴ…褒めすぎかも知れませんが、数多のバンドに真似できるレベルではありません。

今作『We Are One』はそんな彼らの彼ららしさが全面ににじみ出ている作品です。藤井フミヤMay.J、菅原卓郎(from 9mm Parabellum Bullet)という三組とのコラボがいっそう、彼ららしさを引き立てています。

彼らのライブに行くようになってもう10年ほどになりますが、相変わらずVo.の和田唱は口から生まれたかの如く多弁(≠雄弁)で、しゃべりだしたら止まりません。滔々と「リ、リフってのは…」「ブブ、ブルースってのは…」とハート先行でアツく語るシーンはもはやライブの定番とも言えます。
「半径50cm(の世界しか歌わない)」と言われた1st,2ndから3rdアルバムへ、歌詞の世界観が変化し始めたころから、一貫して「ロックを高みに持って行きたい」と話していましたが、10年経ち「踊れるロックの最高峰」という称号を得て思うのは、「自分の曲を聴いてくれ、俺達を見てくれ」という欲求以上に、「ロックってこんなこともできるんだ!」ということを伝えたい思いの方が強かったのだということです。

奥田民生も「自分とお客さんが楽しめるのであれば、(ライブでやるのが)自分の曲である必要は全くない」とよく言いますが、その無欲さが、逆にみんなに愛される曲をつくることにつながっているような気がします。必要以上の我欲を捨ててこそ、普遍的な芸術の価値に接近できるのかも知れません。

そんな彼らはライブでよく、カバーや名フレーズのメドレー、あるいはインプロヴィゼーションなどをやります。
今回はサプライズでMay.Jが出演したこともあり、ベースソロ、ドラムソロも含めそういうシーンがなかったのはロックファン、トライセラファンとしてはやや物足りないところはありましたが、ライブ自体はアルバムが会心作となったこともあり、お客さんのノリも最高でした。

とにかく、来たとき以上に帰るときに元気になれるのがトライセラのライブですが、それはやはりロックの普遍性を体現しているからだと思います。
(2010.12.1 SHIBUYA-AX)

2010/12/01

やつらの足音に耳を澄ませ!~blues.the-butcher-590213 presents "ROOTS"

それほど飲んでもいなかったのに、不覚にも涙してしまいました。

日本屈指のオーセンティック・ブルースバンド「blues.the-butcher-590213」の主催する「ROOTS」というライブイベントに行ってきました。その名の通り音楽的ルーツをテーマにそれぞれのミュージシャンがライブを行う、というものです。

端はムッシュかまやつ。エレキ1本のソロで「やつらの足音のバラード」を歌い始めました。アニメ「はじめ人間ギャートルズ」のエンディング曲です。最初はただ「懐かしいなあ」と思って聴いていたのですが、そのうち歌詞が心に染みわたってきました。

♪何にもない 何にもない まったく何にもない
生まれた 生まれた 何が生まれた
星がひとつ 暗い宇宙に 生まれた

そう、ムッシュは地球の誕生にまで「ROOTS」をさかのぼっていったのです。
聴きながら、僕らの音楽が、たどりたどれば人間の歴史そして宇宙の歴史にルーツを持つんだ、という思いが、あの優しく懐かしいメロディーとともに広がっていきました。

家に帰ってから、改めてじっくり聴きました。
地球の誕生から、マンモスを追ってやってくる「やつら」(おそらく、大陸から地続きだった時代に獲物を追ってやってきた原初の日本人のルーツをイメージしているのだと思います)まで、しみじみと絵が浮かびます。
作詞は漫画原作者の園山俊二氏ですが、自然と人間の歴史に対するふかーい敬愛があったのだと、初めて気づかされました。印象的な歌詞と柔らかいメロディーで子どもの頃から好きだった曲ですが、大好きになりました。


さて、そんな感じで1曲目からいきなり心臓をアイアンクローされたライブは、休憩込みの5時間弱!という超長丁場にも関わらず、最後までアドレナリン全開で楽しめました。

blue.the-butcher-590213は、「ブッチャー」というニックネームを持ち、最も多くのギタリストに愛されながら3年前に若くして世を去ったギタリスト、浅野祥之氏の死をきっかけに結成されたブルースバンドです。
僕は、沼澤尚がドラムを担当するJ&Bというバンドで彼を知りました。J&Bのライブはいつもチケット争奪戦で、まだかまだかと次のライブを待っていたときに、浅野氏が肺炎の悪化で亡くなったという訃報を聞いて、ただただあの音楽が聴けなくなる寂しさを募らせたものでした。


この日のライブアクトは、他にLeyonaIll(DJで参加)、田中和将(Grapevine)、奥田民生の4人。
トリを「blues.the-butcher with 奥田民生」で務めた後、全員のSpecial Sessionで幕を閉じました。

ちなみに舞台は横浜。日本の「西洋化」(という言い方は少々乱暴ですが)の玄関口となった地です。この異国情緒も、海の向こうのルーツを感じさせるものでした。
ついでに中華街で大陸系?ルーツの味も堪能しました(^_^)v
(2010.11.28 横浜Bay Hall)