2010/10/29

音楽恐慌?

昨日、HMVジャパンがローソンに買収される、というニュースがありました。

HMV渋谷の目と鼻の先にあったタワレコは、すでにセブンアンドアイHDが筆頭のドコモに次ぐ大株主になっています。もちろん、コンビニとCDショップが一体化する、というわけではないでしょうが、何やら音楽業界の運命、というか命運を象徴しているような気がしてなりません。

コンビニ経営の鉄則は「売れるものだけ置く」ということです。「この銘柄はあまり売れないけど好きな人がいるから置いとこうか」みたいなことはないですよね。
逆に、「売れるものを置く」のではなく「売りたいものを置く」・・・そんな音楽カルチャーの発信源の一つになっていったCDショップの象徴がHMV渋谷店でした。僕はあまり聴きませんが、いわゆる「渋谷系」なんてのがそうです。

曽我部恵一というミュージシャンが、「今はもうそんなことが許される時代ではなくなった」と話していました。消費不況の時代、資本の集中を余儀なくされたレコード会社も販売店も、株価を上げることがほぼ唯一の評価基準になり、確実に利益をあげることが最優先にされ、つまり「確実に売れるものを置く」ことを強制され、店としての個性が置き去りにされた、というわけです。まさにコンビニです。

先日、メーカーにとってはドル箱もドル箱の宇多田ヒカルが「人間活動に専念するため」と無期限休養宣言をしました。
15歳で文字通り鮮烈なデビューを果たし、数々の売り上げ記録を塗り替えたトップアーティストが「人間活動」のために音楽生産を封印する…音楽は人間的なものじゃなかったの? という疑問を多くの人が感じた出来事でした。

これはいわば生産の破壊。
流通に生産が呑み込まれ、やがては生産そのものが破壊されていく…これは一種の恐慌ではないでしょうか?

結局、音楽生産の崩壊の裏には、「芸術と人間性の乖離」がある、ということなのでしょうか?
(つづく)

0 件のコメント:

コメントを投稿