2010/11/01

続・音楽恐慌?

ローソンが目を付けたのは、音楽的なこだわりが強いと言われるHMVの会員400万人だそうです。比較的購買意欲の高い層をターゲットに、エンタメ関係の需要を掘り起こそう、ということでしょう。

もとより買収そのものを否定するつもりはないし(そもそも株主じゃないし)、がんばっては欲しいと思います。

さて、ヒッキーは引退説まで出てきているようですが、ぜひ再起してほしいものですね。
以前、Mr.Childrenの活動休止を予見し、それが的中したことがありました。アルバム『ボレロ』が出たときに、〝こんな歌、歌い続けられるはずがない〟と思ったからですが、まああのアルバムを聴けば誰でもそう思うかも知れません。

桜井和寿の場合、社会の不条理を歌いながら、批判してきた資本主義のシステムのおかげで自分は成功を収め栄光を手にするという矛盾に突き当たったこと、とくに彼は世の矛盾を自己の内側に見出だし、身を削って歌っていたので、言ってみれば先鋭的な表現者としての感受性がブレイクダウンしてしまった、ということだったと思います。

しかしヒッキーの場合は、プライベートな事情もあるにせよ、芸術家として必要な「人間性の再生産」、僕はよく「心の新陳代謝」と言いますが、それが出来なくなったことによるものです。さまざまな事情から「心の栄養」を取ることが出来なくなり、このままでは「残りカス」のような曲しか書けなくなる、と思ったのでしょう。

職業音楽家としてはそれでも休まず続けるべきなのかも知れませんが、もはや限界に達した業界の在り方に、〝賞味期限の内に搾り取られるだけの使い捨てになってたまるか〟と、バッシンクを恐れず一石を投じた彼女の姿勢を、僕は支持します。

いずれにしても、「人間的なものの再生産」が、つくる側でも聴く側でも行われず、それを前提に業界が利益を上げる仕組み作りに躍起になっている現状は負のスパイラルです。ヒッキーの決断がこの螺旋を断ち切ることにつながることを願って止みません。

僕らにとっては、音楽をファッションやスタイルとして「消費する」聴き方だけでなく、一つひとつの作品をアーティストの分身として大切にすることに、もっともっと頓着する必要があるのでは、と感じます。

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