2010/12/18

King of Rock Go Ahead !! ~奥田民生~

お気に入りのアーティストのライブに行くといつも、「こいつが一番!」と思いますが、やはり民生は民生、「King of Rock」でした。

いつものライブにも増して、戦いの最前線を飄々と進む彼の姿がかっこよく見えたのはなぜでしょうか。よくわかりませんが、今回不思議な感覚だったのが、昔の曲が昔の曲に聞こえなかった、ということです。

楽曲の良し悪しとか特徴、ということとはちょっと違い、また、「古い曲に新しい命が吹き込まれた」というのとも少し違います。
1曲目は僕の中では5本指に入る「人間2」。その後も「彼が泣く」「恋のかけら」と旧作からの連続で、4曲目にやっと今作『OTRL』から「音のない音」をやりました。セットリスト全編を通しても、新旧織り交ぜた構成だったのですが、何というか、今までのアルバム全部がこの前発売された、みたいな感じ。上手く言えない(^_^;)。ソロデビューした10数年前から今までの時間が圧縮された感じです。時の流れを飛び越えたような・・。

キャリアが四半世紀を超えたこと、ユニコーンを再結成し、「バンドマン」という立ち位置に再び立ったこと、現バンドメンバー(””)になって数年たち、バンド力も決定的な水準になっていること、〝公開宅録〟という誰も考えつかないような裸一貫の勝負でアルバムを作り、おそらく無駄な思考を(今まで以上に)そぎ落としたこと・・・などなど、たぶんいろんな要素・要因があったのでしょうが、それがタイミングを一にして〝降りてきた〟状態にあるのでは、という気がします。ちょっと神がかっている感じです。

バンド力で言えば、前のバックバンド(G:長田進、B:根岸孝旨、Dr:古田たかし、Key:斉藤有太)の演奏として最高の到達だと僕が思っている「E」から、「ハネムーン」へ中盤の演奏を聴いたとき、「このバンドもついにここまで来たか」と感じました。「E」のエレキチューンにもしびれましたが、とくに「ハネムーン」は、歌詞の深遠な切なさをそのまま表現するかのような演奏で、圧倒されました。

「3曲目がピーク、あとは終わりに向かってテンションは下降線」という、いつもの天の邪鬼トークと裏腹に、いつも以上のテンションで吠えまくる民生。アンコールで出てきたときにツェッペリンのリフを奏でて(危うく?「Whole Lotta Love」が始まりそうになりましたが)、演奏したくてうずうずしている有太&雅史、「50歳児」(実は来年還暦)と呼ばれ子どものようにはしゃぐ礼さん・・・過去の民生のライブのなかで、1,2を争う出色の出来でした。齢五十を待たずしてミュージシャン仲間から「レジェンド」と呼ばれるのも頷けます。

個人的には、僕が三十歳になるときに発売された「花になる」(僕の曲だと勝手に思っています)が久しぶりに聴けたのもよかったです。その当時はあまり思いませんでしたが、相対的な年齢差が縮まって来たせいか、「花~」を聴いて、彼の姿を見て、「民生のような男になりたい」と初めて思いました。どうすりゃいいのかわかりませんが(^_^;)。

民生はおそらく、(暗い意味ではない)展望のない世界、つまり道も光もない世界、進むべき方向さえ指し示されていない世界の先頭を走っている気分なのだと思います。道しるべがないのは芸術だから当たり前かも知れませんが、彼の後を追いかけるミュージシャンはゴマンといることが、「方向はないのに先頭がある」この世界の面白さと厳しさを象徴しているのではないでしょうか?
(2010.12.14 神奈川県民ホール)

0 件のコメント:

コメントを投稿